もうその笑顔は俺だけのものじゃないんだな
コートの中で楽しそうに話しているアイツは俺の幼馴染。
そして俺の思い人
でもアイツは俺の思いに気づくことのないまま
数日前、俺の先輩と付き合い始めた。
昔から家が近くて年も同じだったからいつも一緒だった。
どちらかの親がいないときは泊まるのもいつものことだった。
今までどちらかが誰かと付き合うってこともなかったし、
アイツに好きな人がいるってことも聞いたことがなかった。
だから俺は勘違いしていたんだ。
─ これからも2人ずっと一緒だって…
先輩と話しているアイツはとても綺麗に笑う。
俺といたときと同じように。
アイツの笑顔は俺だけのものだと思っていたのに。
俺の視線に気づいたからか、俺の方にやってきて
俺の心を縛り付けているあの笑顔でいつものように言うんだ。
「赤也!!練習お疲れ様!!」
っ…
ほら…お前の笑顔で俺はこんなにも胸が苦しくなる。
きっとおれは自分の欲望に負けてお前を苦しめる。
だからお願い。
もう俺にかかわらないでくれ。
お前守るためなら大好きなテニスだって捨ててもいい。
「おいっ!!」
別の先輩たちの所に行こうとするアイツを引き留める。
振り返り、どうしたの?と聞いてくるアイツが本当に愛おしい。
大好きだから
本当に大好きだから
狂おしいくらいに…愛してるから
「俺の試合、しっかりと見てろよ!!!!」
今日で最後
お前の記憶に残る俺が君が昔好きと言ってくれた
笑顔でありますように
end