時は経って修学旅行当日











 重い足を引きずって新幹線に乗り込んだ。






























































 宿の部屋以外は男子の班員もずっと一緒なので


 新幹線の座席もものすごく近い。








 っていうことは丸井も近い。



















































































 っていうか隣








































































































 班決めの日の放課後。






 誰が誰の隣に座るか=誰が丸井の隣に座るか


 によって私と以外の2人がもめ始め、


 なぜかまたくじ引きになり、まさかの私が隣なのだ。




















 交換したかったがその子たちは





 『…しょうがない、さんどうぞ。』





 といって諦めてた。









































 …最初から譲り合えよ



















































































 ってことで今隣に座ってるんだけど





 めっちゃ空気重い。




















 っていうか本気でやだ。



















































































 1時間も会話がなくうとうとし始めたとき


 丸井が話しかけてきた。









































 「…この前は強引に問い詰めて悪かったな…」








 え?と思って横を向くと顔を髪を同じ色に染めた丸井がいた。




















 「言いたくなかったんだよな。マジごめん。」





 「あ、うん。」




















 何言っていいか全然わからなかったから


 とりあえずうなずいておく。






























































 それからまた少しの沈黙





 それを破ったのは、丸井だ。









































 「俺、お前のこと少しわかるから。」




















 今回は丸井は話を止めずに話し始めた。






























































 「俺、小学校のころいじめられてたんだ。」








 「この髪地毛なんだけどさ、周りからバカにされて。」








 「一回反抗したらどんどん周りから人がいなくなった。」











 「挙句の果てには悪口言われたり、物隠されたり。」











 「一番仲よかったやつも俺のとこには来なくなった。」




















 「それで、俺は人が信じられなくなった。」





 「もう一度信じて、裏切られてあの苦しみを味わいたくなかった。」








































































































 「だから心を閉ざした。」






























































 ここまで言って丸井は一旦話を切った。





 私は驚きで言葉が出せなかった。





 そんな私の顔をちらっと見て苦しそうに笑った後


 また視線を前に戻して『それで』と話し始めた。









































 「それで誰ともか関わらなくなった。」








 「でも地元の中学に行くとなるとあいつらと一緒になる。」





 「悩んだよ。どうしようかって。あの時の俺じゃ馬鹿すぎて私立だって行けない。」









































 また苦笑した丸井の顔はその時のことを思い出しているようで


 本当につらそうだった。









































 「テニススクールに行ってた時、立海のテニスバックを持ってる人たちを見たんだ。」








 「その人たちは本当に強かった。」












 「その人たちのプレイを見てる人たちが、みんな引き寄せられていった。」





 「俺その人たちが帰る時に立海について聞きに行ったんだ。」









































 そういえば聞いたことがある。








 私がと家で遊んでいた時、汗をかいて帰ってきた私たちの兄は





 『今日テニススクールで試合したんだ。』


 『そしたらちっこい赤髪の子がさ、立海について聞いてきたんだ。』














 『あいついい目してたな。あいつなら立海来ても上目指せる。』









































 あれは丸井のことだったんだ…














 「俺はその人たちに憧れて親に頼みまくって立海目指した。」





 「勉強もめっちゃ頑張った。学校の先生が驚くくらい。」




















 『どう?天才的?』そういう彼の顔も声も


 先ほどより明るくなっていた。

















 「それで立海入学できた。でも最初はやっぱ怖かった。」





 「でも俺にはあいつらがいたから。」

















 誰だか聞かなくてもわかった。


 丸井がもっとも信頼している立海レギュラー陣のことだろう。

















 「あいつらがいたから俺はここまで変われた。」














 まぁ頭も変わって元に戻っちまったけどな!





 って笑う丸井はいつもの丸井で。











 そういう人たちに出会えた丸井を本気でうらやましく思った。









































 「にもいるんじゃんか。理解してくれてる人。」








 そう指差した先には女子たちと話すの姿。



































 そっか私にもいたんだ。


 近すぎてわからなかったけど


 ちゃんと理解してくれてる人がいる。











 自然と涙があふれてきた。





 それを見て丸井はニカって笑って私の頭をガシガシ撫でてきた。




















 普段なら絶対に嫌がっていたのに


 どうしてだろう。





 今この時はその乱暴に撫でる丸井の手から感じる体温が


 とても心地よかった。

















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